CSR REPORT 2016
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48CGC GROUP CSR REPORT 2016物理学者の武谷三男はものを考える時、3つの段階があるといっています。その3つとは現象を見る現象論的段階、いかなる構造にあるかという実体論的段階、そして本質論的段階の3つです。このことは毎日の食事生活にも応用できます。食品を扱う人々の考え方を武谷三男の3つの段階に当てはめてみましょう。食べ物が売れなくなったとき、まわりの住環境の変化を原因にすれば、これは現象論的段階で見ていることになります。構造をみる実体論的段階とは、生産者と販売者と消費者の流通機構のことでしょう。では、本質論的な段階とは何でしょうか。食べ物にとっての本質は「味」だと思います。若い消費者はキュウリ、トマト、大根の味が昔と比べて落ちていることを知りません。例を出します。「生産農家はキュウリを出荷するとき、本日出荷するキュウリがすべてまっすぐで同じ大きさであればいいと考え、販売者は単一料金で売れればいいと考えている」と種苗店の人に聞いたことがあります。「味」は誰が考えるのでしょうか。私が育った1950年代では、おなかがすいて学校から帰ってきたとき、虫食いだらけの葉っぱの陰から曲がったキュウリを探し出し、洗って、包丁で縦に切って種を出し、味噌をすり込んで食べたうまさを知っています。1本のキュウリは喜びと幸せを運んでくれたのです。私たちはCGCグループ協賛のもと「全国児童画コンクール」をおこなっています。1982年のコンクール発足以来CGCグループとは「異体同心」の理念を常に共有して活動してまいりました。お店の皆さんに絵を集めていただき、私たちが審査し、また、お店の皆さんに絵をお返しいただくなかで 集める方々の血のにじむような努力はよく承知しています。しかしたくさん集まることの本質は「子どもの絵を成長の記録として見て、作品として見ていない」努力をしてきたところにもあるのです。私たちは、「美味しいものは喜びと幸せを運ぶ」と同じ精神で子どもがすなおに描いた絵を選んできました。それを全国の子どもたちに受け入れてもらっているのです。CGCグループの皆様にはぜひこの活動を続けていただきたいと願っています。1940年、長野県出身。90年、横浜国立大学教育学部教授。96年、横浜国立大学教育学部附属横浜小学校校長。2004年国立大学法人横浜国立大学教育人間科学部附属学校部長などを歴任。「全国児童画コンクール」の審査委員長を第25〜34回まで務める横浜国立大学名誉教授(前・全国児童画コンクール審査委員長)宮坂 元裕さん美味しいものは、喜びと幸せを運ぶ第三者からのご意見「協業のこころとちから報告書2016」を読んで

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